【バカッター】Twitterで他人の犯罪告白をリツイートすると名誉毀損になる!?



Twitter上で、自分の行った犯罪や迷惑行為を、わざわざ自分でツイートする人がいる。それで「炎上」してバイトをクビになったり、学校や会社をやめることになったり、最悪の場合は逮捕されたりするのだから困ったものだ。
ただ、面白半分にこのような「炎上」に乗っかり、犯罪告白などのツイートをリツイートすることは、法律的に問題かもしれない。このようなリツイートを行うことが名誉毀損にあたる、という考え方も、おそらく成り立つのだ。

執筆:法務博士 河瀬 季(tokikawase.info

実際に逮捕されることは多分ないだろうけど……

実際の「炎上」では、数百~数万のTwitterユーザーがリツイートを行うことになる。「その全員を逮捕する/訴える」というのは非現実的だ。「ネットの世界の有名人」がリツイートを行い、その人が「見せしめ」に逮捕される/訴えられる、ということなら、「絶対にあり得ない」とは言えないかもしれない……という程度だろう。
少なくともほとんどのTwitterユーザーにとって、以下で検討するのはあくまで理論上の問題だ。単なる興味、またはコンプライアンス的なニュアンスの話として読んで頂きたい。

他人の犯罪を「告発」すると名誉毀損になる場合がある

まず前提として分かっておいて欲しいことは、Twitterなどで「あいつがこんな犯罪をしていた!」といった「告発」を行うと、名誉毀損になる場合がある、ということ。よく誤解されているが、名誉毀損は本当のことを書いても成立し得るし、犯罪の「告発」であっても成立し得るのだ。この問題の詳細に関しては、別記事を参照して欲しい。

本記事では、犯罪の「告発」でも名誉毀損になる場合がある、ということをスタートラインにする。

他人のツイートのリツイートとはどういう行為なのか

問題は、ツイートするのではなく、他人のツイートをリツイートした場合にどうなるのか、ということだ。法的に言うと、名誉毀損は「事実を摘示(公開)」した場合に成立するが、リツイートは元ツイートに書かれた事実(「誰それがこんな犯罪をした」)の「摘示」と言えるのか、ということである。
そして、この問題を考える上で最も重要なポイントは、「リツイートとはどういう行為なのか」ということだろう。
大きく言って、二つの考え方があり得る。

考え方1:リツイートは単に情報拡散を手伝う行為

まず最初の考え方は、事実の公開(摘示)自体を行っているのは元ツイート(のみ)であり、リツイートは、単にその拡散を手伝う行為に過ぎない、というものだ。

考え方2:リツイートは引用やコピペなどと同様の行為

次の考え方は、リツイートは、元ツイートの内容を引用するなりコピペするなりする行為と同様であり、新たに事実の公開を行う行為である、というものだ。
左のようなツイートを自ら行うこととほぼ同じで同視できる、というような考え方である。

どちらの考え方が妥当か?

リツイートについて扱った裁判は、まだ存在しないと思われる。従来議論されてきた&裁判例もあるのは、リンクを張る行為だ。例えば、他人の名誉を毀損するようなブログ記事がある場合に、その記事のURLを掲示板に貼り付けた人は、考え方2:名誉毀損の正犯(主犯)になるだろうか?それとも、考え方1:「単に手伝っただけ」であり、幇助(共犯)だろうか?
昨年4月に、東京高裁はURLの貼り付けについて、「考え方2:名誉毀損の正犯(主犯)になる」という判断を行った。しかし、総務省開催の研究会は「考え方1:(主犯にはならない)可能性が高い」としているようだ(参考:新法・新判例|フォーサイト総合法律事務所)。判断が分かれているのである。



リンクを張る行為について考え方2を採用する東京高裁の考え方から言えば、上記のような書き込みは名誉毀損(の主犯)にあたる、ということになりそうだ。ただ、「リツイートの場合も考え方2」と言えるのかは何とも言えないし、そもそも上記通り、リンクについても「考え方2が正しい」と断言はできない。

考え方1か2かで結論が180度変わる

上述のリンクのケース、つまり

1. Aさんが他人(例えばCさん)の名誉を毀損するブログ記事を書いた
2. Bさんがその記事のURLを貼り付けた

という場合、Bさんの行為は、主犯だろうが共犯だろうが、いずれにせよ犯罪だ。「主犯か共犯か」は、学問的/量刑的には問題だが、「いずれにせよ犯罪なんだしどうでも良い」とも言えるだろう。
しかし、リツイートのケース、つまり

1. Aさんが自己の犯罪を「告白」するツイートを行った
2. BさんがAさんのツイートをリツイートした

という場合、考え方12かにより、Bさんの運命は大きく変わる。



考え方1:Aさんの行為は、「自分自身に対する名誉毀損的行為」であり、名誉毀損にはならない適法な行為だ。だからBさんは適法な行為の手助けをしただけであり、何ら罪にならない。
考え方2:Bさんは、Bさん自身が、Aさんを被害者とする名誉毀損の主犯であり、罪になる。

どちらの考え方に立つかにより、Bさんの行為が「犯罪」かどうかが分かれるのだ。

発展的な話:考え方2だと絶対に「犯罪」になる?

……厳密に言えば、考え方2だとしても、「罪になる」と簡単には断言できない。
例えば、「既にAさん自身のツイートにより、Aさんが犯罪をやったことはネット上で明らかになっているのだから、同じ内容をツイート(リツイート)しても名誉毀損にはならないんじゃない?」というような疑問もあるだろう。
しかし、「既に明らかにされている事実であれ、まだ知らない人もいるのだから、同じ内容を書いた人にも新たに名誉毀損が成立する」というように考えられている。考え方2だとすると、Bさんを「無罪」にするのはなかなか難しいだろう。

もっとも、例外的に名誉毀損にならない場合はある……という点については上記記事を参考に。

リツイートは「犯罪」になるのか

考え方12のどちらが正解か」は、現時点ではおそらく答えのない問いだ。「リツイート」を、技術的観点や法的観点より、どちらと捉えるか……というような問題になるだろう。
ネット上での様々な行動、例えばリンクを張る行為やリツイートが、法的にどのような意味を持っているのか……ということは、今後少しずつでも明らかにされていかなくてはならない問題だ。今回扱ったテーマは、

・児童ポルノへのリンクを張る行為が児ポ法違反の主犯と判断された、いわゆる「URL事件」
・Facebookにおける「いいね!」に「言論の自由」の保護が及ぶとされたアメリカの裁判例

などと同じ次元の問題、かもしれない。

記事中の画像やアイコンについて

・扉写真は公園に空き缶を持って行って撮影しました。
・アイコンは「3500 Free "Farm-Fresh Web Icons" by FatCow Web Hosting」を利用させて頂きました。ありがとうございます。

法務博士 河瀬 季
東京大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻 卒業。
2002年から「tokix」名義で、雑誌「ネットランナー」「PC Japan」への寄稿、書籍「iPod for コレクターズ」の全編執筆など、多数の雑誌・書籍における執筆活動を行う。2009年に東京大学の法科大学院(ロースクール)に進学し、2013年に司法試験に合格。

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参考

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2013年08月14日18時00分 公開 | カテゴリー: ソーシャル | キーワード:, , | Short URL
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