SmartNewsは違法アプリ? ニュースアプリの仕様と著作権の関係



話題のニュース記事を一括チェックできる人気アプリ「SmartNews」は、新聞社などのサイトから記事データを取得(ダウンロード)して表示している。そこで、「何かこれ著作権的に危ないんじゃない?」という気がしてくる。
「SmartNews」のように、新聞社などのサイトから記事データを引っ張ってくる場合、アプリの仕様によって、合法か違法かが変わってくる。「SmartNews」は合法なのだろうか。また、同種アプリを作る場合、どうすれば合法になるのだろうか。

執筆:法務博士 河瀬 季(tokikawase.info

18:33追記:このテーマは、少し前にネット上で話題になったことがあるものなのだが、SmartNewsは、5/30に仕様を変更している。本記事では、5/30の仕様変更までをカバーする。

仕様1:アプリが記事を直接ダウンロード



まず、アプリ自身がニュースサイトから記事データをダウンロードする場合、ユーザーによるダウンロードは合法だ。そして、アプリ(の作者)は、単に合法なダウンロードの手助けをしているだけだから、こちらも合法だ。

仕様2:自前サーバー上で記事をまとめてダウンロード

しかし、まず自前サーバー上で記事をまとめ、まとめられたデータをアプリがダウンロードする、という仕組みだと、自前サーバーによる記事取得(ダウンロード)や、アプリに対する配信が違法になってしまう。



……「なんか法律って変だ」と思うかもしれないが、著作権法は、「そのダウンロードは、自分自身で楽しむため?それ以外の目的?」ということを問題にしている。「ユーザーに配信するため」のダウンロードはアウトなのだ。

ただし、「キャッシュサーバー」「検索エンジン」なら別

とはいえ、上記原則には例外がある。「自前サーバー」が「キャッシュサーバー」か「検索エンジン」だと認められれば合法なのだ。分かりやすい例として、Google検索エンジンについて考えてみよう。



Google検索エンジンは、ネット中のウェブページをクロールして「ダウンロード」し、情報をまとめて「検索結果ページ()」として配信している。従って違法……とも思えるが、著作権法は、「キャッシュサーバー」や「検索エンジン」なら、このような「ダウンロード」「配信」を行ってもOK、と決めている。だからGoogle検索エンジンは合法だ。
……しかし、仕様2、つまり「ニュースアプリの自前サーバーがネット中のニュース記事を収集してまとめる」という場合に、この「自前サーバー」を、「キャッシュサーバー」とか「検索エンジン」とか呼ぶことは、(IT的な意味での)常識的に「なんか変だ」という感がある。詳細は割愛するが、法律的にも、この主張はなかなか厳しいだろう。

実際の「SmartNews」はどちらの仕様?

さて、では実際の「SmartNews」はどっちなのだろうか。
これを調べるには、「SmartNews」を、PC上で走らせた(いわゆる)ローカルプロクシ経由で動かせば良い。あんスマ読者にも比較的馴染みがありそうなツールとして、ここでは「Proxomitron」を使ってみよう。


あれ、何か、直接新聞社などのサーバーに接続するのではなく、「SmartNews」のサーバー(snp*.smartnews.be)に接続しているような……。

そして、ブラウザに突っ込んでみると、新聞社等の記事と同じページ、つまりいわゆるキャッシュが表示されるような……。

仕様3:自前サーバーを経由して1記事ずつダウンロード

現在の「SmartNews」は、自前サーバー上で各ニュースサイトの記事を1記事ずつキャッシュし、キャッシュされた各記事データをアプリがダウンロードする、という仕様になっている。



これは、「自前サーバーは(法律的に)キャッシュサーバーだ」と主張しやすくするための設計だと考えられる。実際、SmartNews運営は

仕様は、著作権専門の弁護士とも相談しながら決定しており、現行の著作権法上、合法の範囲内であると弊社では考えております。
SmartNewsに関心をおもちいただいているみなさまへ | 株式会社ゴクロ (Gocro, Inc.)

Webサイトへのアクセス負荷を軽減し、効率的な通信を実現するため、プロキシサーバを利用します。
情報取得アーキテクチャの改訂について

とコメントしている。
……ということで、現在の「SmartNews」が合法であるためには、「SmartNews」の自前サーバーが、法律的にキャッシュサーバーと認められる必要がある。「認められるの?」というのは細かい話になるので省略するが、「SmartNews」を愛用するユーザーとしては、「『SmartNews』の自前サーバーはキャッシュサーバーだよ」と言い張っていきたいところだ。

3種類の仕様と合法性

このように、「SmartNews」的なニュースアプリを作る場合、大きく言って3種類の仕様があり得る。

仕組み快適さ合法性
仕様1:アプリが直接DL△:1記事ずつ落とす&新聞社サイトが重い◎:原則合法
仕様3:自前サーバーを経由し1記事ずつDL○:1記事ずつ落とす&自前サーバーは軽くできる○:自前サーバーを「キャッシュサーバー」と認めさせやすい?
仕様2:自前サーバーで記事をまとめてDL◎:まとめて落とす&自前サーバーは軽くできる△:自前サーバーを「キャッシュサーバー」と認めさせるのは厳しい?

単純に言えば、

・アプリの快適性を上げようとすると違法に近づく
・合法性を確保しようとするとアプリの快適性が下がる

という関係だ。この中でどうバランスを取るか、というのが、「SmartNews」的なニュースアプリを作る場合の問題なのだ。

スマホアプリのバックグラウンド動作とニュースアプリの仕様

ただ、仕様2や仕様3を選ぶメリットは、今後小さくなるかもしれない。Androidはとっくにアプリのバックグラウンド動作に対応しているし、iPhoneもiOS7でようやく対応する模様だからだ。「アプリがバックグランド動作可能」なら「記事取得に時間がかかってもユーザーの目に触れにくい」ので、今後は仕様1的なニュースアプリが増える、かもしれない。

一点だけ専門的な補足

最後に一点だけ、専門的な補足を。
ネット上には、以下のような見解も見られる。
「自前サーバーがキャッシュサーバーだとしても、やっぱりSmartNewsは違法だ。なぜなら、法律は『キャッシュサーバーはデータをダウンロードして良い』と決めているだけで、『ダウンロードしたデータを配信しても良い』とは決めていないから。」
……たしかに条文だけ読むと「あり得ない」見解ではないのだが、ただ、「ならばフォワードプロクシ一般が違法では?」という重大な疑問がなくもない。
上記の「見解」は、文化庁長官官房著作権課の解釈とは異なる、少なくとも、「異論のあり得ない解釈」ではないと考えられる。著作権情報センター「コピライト」2010年1月号の32-34頁を参照。問題は、「SmartNewの自前サーバーは法律的にキャッシュサーバーにあたるか」に帰結するだろう。

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法務博士 河瀬 季
東京大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻 卒業。
2002年から「tokix」名義で、雑誌「ネットランナー」「PC Japan」への寄稿、書籍「iPod for コレクターズ」の全編執筆など、多数の雑誌・書籍における執筆活動を行う。2009年に東京大学の法科大学院(ロースクール)に進学し、2013年に司法試験に合格。

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2013年06月16日16時48分 公開 | カテゴリー: ネット情報活用 | キーワード:, , | Short URL
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