TwitterやFacebookに他人の写真を勝手にアップして良い?「モザイクかければOK」?



「街中や電車内などでこんな変な人を見かけた!」というように、TwitterやFacebookに他人の写真をアップする人がいる。こうした行為は、名誉毀損として犯罪になったり、プライバシー侵害として慰謝料請求の対象になったりする。そして、それを理由としてネット上で「炎上」したり、結果、学校や会社をやめさせられるなど重大な社会的不利益を受けたり……などともなりかねない。他人の写真をSNSで公開することは、どこからが「アウト」なのだろうか?例えば、「友達のみ公開」「鍵付き」で公開したり、モザイクをかけたりすれば良いのだろうか?

執筆:法務博士 河瀬 季(tokikawase.info

事実ならOK ← まちがい

そもそも、「本当のことなら公開しても良い、少なくとも『名誉毀損』にはならない」と考えている人もいるだろう。しかし、これは間違いだ。「名誉毀損」や「プライバシー侵害」とは、簡単に言うと

名誉毀損:社会的評価が下がるようなことを公開すること
プライバシー侵害:相手の立場になったら普通公開されたくないことを公開すること

と、いうものだ。いずれにせよ、「本当か嘘か」は関係がない。本当でも名誉毀損は成立し得るし、嘘でもプライバシー侵害は成立し得る。たまにネット上で

A君「B君は●●」
B君「プライバシー侵害だ」
A君「あ、●●だと認めるんだw」

というようなやりとりが見られるが、法律的に言えば、B君は、別に「自分が●●であること」を認めていない。「●●」が「相手の立場になったら普通公開されたくないこと」であれば、B君が●●だろうとなかろうと、プライバシー侵害は成立し得る。
なお、政治家のスキャンダルなどに関しては、以上の「本当だろうが嘘だろうが、社会的評価を下げたりしたらダメ」という原則に対する例外がある。そうでないと、スキャンダル記事全般がアウトになってしまうからだ。ただ、「街で見かけた変な人」などについては、この例外が働く余地は(ほぼ)ないだろう。

公共の場所ならOK ← まちがい

次に、「公共の場所では、そもそも周りの人に見られているのだから、『プライバシー』とかいう話にはならない、だから写真を撮ってネットにアップしても良い」というような考え方だ。
しかし、公共の場所であっても、写真を「みだりに」撮影したり、その写真を「みだりに」公開したりしたら、プライバシー侵害は成立する。名誉毀損も同様だ。実質的議論としては、「公共の場で周りの人に見られること」と「ネット上にアップされ、その場にいなかった人に新たに見られること」は別の問題だ……というような話になる。

実際に、「SEX」プリントTシャツを着た女性が、街頭でファッションスナップを無断撮影された事件がある。左写真は同型だと考えられるショーの写真だ(参考:Dolce & Gabbana Spring 2003 Ready-to-Wear Collection Slideshow on Style.com)。女性はその写真を掲載したサイトを訴え、慰謝料請求が認められた(参考:一般人の肖像権侵害 ~街の人事件~|著作権 侵害・違反を考える)。
「自分がそのTシャツ気に入って着てたんでしょ?」「サイトで公開されたくないなら、そんなTシャツ着なければ良いじゃん」と思う人もいるはずだが、「街中で見られること」と「サイトで公開されること」は違う、と考えられている。

友達のみ公開/鍵付きならOK ← 事実上の効果はある

Facebookは投稿の公開範囲を設定できるし、Twitterにはいわゆる鍵付きアカウントというシステムがある。このような方法を使い、友達のみに写真を見せれば問題はない……のだろうか。
名誉毀損は、「不特定or多数」に写真などを見せることで成立する。Facebookの友達は、同級生や同僚など「特定」だろうけど、「少数」だろうか。クリアな基準のない問題だが、おおむね数十人程度で「多数」と考えられている。「友達のみ公開」でも名誉毀損が成立し得るのだ。
もっとも、事実上の効果、つまり、「被害者」や「炎上させようとする人」の目に触れなければ問題は起きない、という効果はあるだろう。しかし、あくまで「名誉毀損だけど被害者にバレない」というような意味だし、また、「実は友達の友達だったので『密告』された!」となる可能性もあるだろう。

モザイクかければOK ← 微妙

実際には、ある程度「常識」を持ったユーザーは、無断撮影した写真をモザイク付きで公開することが多い。
ただ、「肖像権」という言葉が一人歩きしているせいか、「顔にモザイクさえかければ問題はない」と考えている人もいるようだが、それは微妙だ。
問題なのは、「顔が写っているか否か」ではなく、「誰なのか判断できるか否か」である。いくらモザイクをかけたところで、文章部分で「あんスマに寄稿してる河瀬季が~」と書いたら文章が名誉毀損だし、誰なのか分かるような「ヒント」がある場合も同様だ。

発展的な話:誰にとっての「ヒント」があるとマズいのか

モザイクをかけられた人が誰なのか、その人を知っている人(例えば面識がある人)から見て判断可能なら、名誉毀損やプライバシー侵害は成立し得る、と考えられている。



例えば、

・この「あんスマ公園」の近所に大学がある
・持っている本が、その心理学科2年の必修科目の教科書

という場合、同級生は、「あれ、これ自分の同級生かも。としたら、髪型や体型的にあいつだ!」と判断できるかもしれない。ならば、顔だけでなく本や場所も隠すべき……というような考え方だ。

「危ない橋」を渡りたくなった場合のために

そもそも、無断撮影した写真をアップしなければ、本記事で検討してきたような問題について考える必要はない。「そんな危ない橋を渡らなければ良い」というのは、当然あり得る考え方だ。「しかしそうは言ってもどうしても渡りたくなった」というような場合のため、頭の片隅くらいに残しておくべき話だろう。

法務博士 河瀬 季
東京大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻 卒業。
2002年から「tokix」名義で、雑誌「ネットランナー」「PC Japan」への寄稿、書籍「iPod for コレクターズ」の全編執筆など、多数の雑誌・書籍における執筆活動を行う。2009年に東京大学の法科大学院(ロースクール)に進学し、2013年に司法試験に合格。

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2013年07月31日18時00分 公開 | カテゴリー: ソーシャル | キーワード:, , | Short URL
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