5分でわかる!意外と難しい「ダウンロード違法化」「刑罰化」の基本



「ダウンロード違法化」「ダウンロード刑罰化」は、言葉自体としては有名になったが、具体的な内容はなかなか難しく、誤解をしている人も結構多い。例えば、「YouTube公式チャンネルにアップロードされているPVを落としたら違法ダウンロード」「昨晩放映されたアニメを海賊サイトからダウンロードするのは犯罪」というのは、(少なくとも原則的に)両方「間違い」なのだが、「なぜ」「どのように」間違いか分かるだろうか?

執筆:法務博士 河瀬 季(tokikawase.info


ダウンロードは原則合法である

いわゆる「ダウンロード違法化」は2010年1月1日、「ダウンロード刑罰化」は2012年10月1日施行の著作権法改正を指す。簡単に言えば、元々「合法」だったダウンロードについて、まず「違法化」が行われ、次に「刑罰化」が行われた……という順序だ。ポイントは2点。
まず、他人が著作権を持つデータのダウンロードは、自分で楽しむためであれば、原則合法だ。……「他人が著作権を持つデータ」として、「Perfumeの曲のMP3」とか「アニメ版『進撃の巨人』の動画」とかをイメージすると「え!?」と思う人もいるかもだが、例えばこの記事(文章)だって、筆者が著作権を持つデータだ。あとで読むため、PC/スマホ内にこの記事を保存することは、直感的に言っても「合法」だろう。



「ダウンロード違法化」「刑罰化」は、原則として合法なダウンロードの一部を、例外的に「違法」「刑罰対象(犯罪)」とするものなのだ。
また、「違法化」と「刑罰化」は意味が異なる。この点については後述する。

「ダウンロード違法化」の範囲は?

「ダウンロード違法化」の範囲、言い換えれば「違法ダウンロード」の対象は、以下のような条件を全て満たすものだ。

A1. 音楽or動画のダウンロード
A2. 違法アップロードされたもの
A3. A2であることを「知りながら」行うこと

有名なのは、A1だろう。「音楽or動画」以外、例えば漫画は対象外だし、「ダウンロード」以外、例えばメールやストリーミングは対象外だ。YouTubeのような形式でも、閲覧自体は「違法ダウンロード」にはならない……と考えられている(参考:「文化庁(中略)平成21年通常国会 著作権法改正等について」の「問10」)。

YouTube公式チャンネル動画を落としても「違法ダウンロード」ではない

意外と知られていないのは、A2だと思われる。例えば、YouTubeには権利者によって合法的にアップロードされた動画も多い。これらの動画のダウンロードは「違法ダウンロード」にはならない。「ダウンロード違法化」は、あくまで「違法アップロードされたもの」、典型的にはいわゆる海賊torrentサイトなどで公開されているファイルを対象にするものだからだ。



YouTubeは利用規約でダウンロードを禁止しているが、規約は「法律」ではない。YouTube上の合法コンテンツのダウンロードは、規約違反にはなる(この意味は本記事では割愛する)が、「違法ダウンロード」「犯罪」にはならない。
また、A3の「知りながら」については本記事では省略する。

「違法」と「刑罰対象(犯罪)」の違いとは?

次に「ダウンロード刑罰化」の範囲……なのだが、その前に、そもそも「刑罰化」とはどういうことだろうか。
「違法な行為」と「刑罰対象(犯罪)」は違う。法律の世界には、「違法だけど、刑罰対象(犯罪)ではない」というものもあるのだ。典型的には不倫だ。

・不倫は「違法」である → だから相手に訴えられると損害賠償を払う必要がある。
・不倫は「刑罰対象(犯罪)」ではない → だから逮捕されることはない。警察の捜査を受けることもない。

と、いうことだ。不倫は「違法」だが「刑罰対象(犯罪)」ではないため、損害賠償を請求しようとする人は、探偵なども使いながら自力で証拠を集める必要がある。
乱暴に言えば、「違法だけど刑罰対象(犯罪)ではないダウンロード」は不倫と同じ扱いだ。

「ダウンロード刑罰化」の範囲は?

「ダウンロード刑罰化」は、「ダウンロード違法化」の対象の一部を、刑罰対象(犯罪)とするもの。対象は、以下のような条件を両方満たすものだ。

B1. ダウンロード違法化の対象(上記のA1-A3)
B2. 「有償」なコンテンツであること

B2は、一言で言えば「お金を取って流通しているコンテンツ」ということ。オリコンチャートに登場する音楽やハリウッド映画などが典型だ。

DVD化されていないテレビ番組を落とすのは「犯罪」ではない

テレビ番組は、放映時点では(オンデマンド放送などを除き)「無償」だ。だから、無断アップロードされているアニメなどをダウンロードした場合

・動画共有サイトへのアップロードは著作権侵害であり違法だからA2が満たされる。さらにA1とA3も満たされるなら「違法ダウンロード」である
・しかしB2が満たされないから「刑罰対象(犯罪)」ではない

と、いうことになる。



ただし、最初は無償だったものも、CD/DVD/BD化等されたら有償に変わる、と考えられている(参考:「文化庁(中略)平成24年通常国会 著作権法改正について」の「問7-2」)。

「違法ダウンロード」と「刑罰対象(犯罪)なダウンロード」

ここまでを読んで、「とりあえず分かったけど、すぐ忘れそう……」と思った人も多いはず。
実際にPCやスマホを使っていて、「今自分が行おうとしていることは違法?犯罪?」と疑問に思った時、「ポイント」になることが多いのは、以下の点だと思われる。

・違法アップロードされているファイルのダウンロードは「違法」
・その中でも、販売されているコンテンツのダウンロードは「犯罪」

差し当たり、この点を理解しておけば、多くのケースで正しい判断をできるはずだ。

写真について

photo credit: Connor Tarter via photopin cc

法務博士 河瀬 季
東京大学 法学政治学研究科 法曹養成専攻 卒業。
2002年から「tokix」名義で、雑誌「ネットランナー」「PC Japan」への寄稿、書籍「iPod for コレクターズ」の全編執筆など、多数の雑誌・書籍における執筆活動を行う。2009年に東京大学の法科大学院(ロースクール)に進学し、2013年に司法試験に合格。

参考

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2013年08月21日13時50分 公開 | カテゴリー: マルチメディア | キーワード:, , | Short URL
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