最近のスマホは本当に賢くて驚かされる。特に、対話型の音声入力サービスの充実ぶりは相当なもので、日常会話のつもりでざっくばらんに話しかけても、しっかり認識して自然な答えを返してくれる。特に、iPhoneに搭載されている「Siri」の会話がユニークなのは有名だが、Androidにもドコモの「しゃべってコンシェル」、ヤフーの「音声アシスト」、またロシア製の音声認識エンジンを元にした「桐」といった対話型アプリがリリースされている。
これらの中でもっとも優秀なアプリはどれだろうか。それぞれの性能を比較するために、アプリにクイズを出して正しい答えを導き出せるかどうかを試してみた。題して「スマホ　クイズ王決定戦」。クイズに正しく回答するには、問題を正確に聞き取る「音声認識」。認識した語句を単語ごとに切り分ける「自然語解析」。重要度の高いキーワードを見つけ出す「検索キーワード抽出」、検索範囲を絞り込んで正しい答えを導き出す「検索結果の提示」の4つの性能が試される。クイズはこれらの機能を試す絶好の形式で、この4機能を高いレベルで備えているのが、クイズ対決の勝者となるだろう。
日本の企業によって開発された「しゃべってコンシェル」「音声アシスト」対、海外製で世界展開している「桐」「Siri」という、国内勢と海外勢の対決でもあるこの勝負。果たして、クイズ王に輝くのは一体どのアプリだ？

自己紹介：「あなたの名前は？」

■ しゃべってコンシェル	■ 音声アシスト
正解(^ｰ^)+3点	正解(^ｰ^)+3点
■ 桐	■ Siri
正解(^ｰ^)+3点	正解(^ｰ^)+3点

まずは肩慣らしに自己紹介から。「あなたの名前は？」と音声入力した回答がコレ。「音声アシスト」と「Siri」は普通に名前を回答。「しゃべってコンシェル」は「好きな名前で呼んでください」と奥ゆかしい反応をしてくれた。「桐」の本名はキリー・アントワネット、略してキリらしい。てっきりSiriのパロディだとばかり……。

問題1：「今年は何年？」

■ しゃべってコンシェル	■ 音声アシスト
正解(^ｰ^)+3点	正解(^ｰ^)+3点
■ 桐	■ Siri
正解(^ｰ^)+3点	お手上げヾ(- -)ﾉ゛

シンプルに「今年は何年」と質問。「しゃべってコンシェル」「音声アシスト」「桐」の回答は「2012年」で正解。「音声アシスト」に至っては西暦だけでなく、年号、干支まで答えてくれている。唯一、躓いたのがSiriで、音声認識は正しく行えているものの、質問として意味のあるキーワードを照合できなかったらしく、質問の文言をそのままウェブ検索へと丸投げしている。「今年の西暦は？」などと質問の仕方を変えてみても同様。「今日は何日」という質問をしたときは、正しい日付けを回答するのだが……。人間らしい受け答えをすることで人気のSiriだが、意外と基本的な応答の中に盲点があるようだ。

問題2：「現在の日本の総理大臣の名前は？」

■ しゃべってコンシェル	■ 音声アシスト
不正解(TωT)	お手上げヾ(- -)ﾉ゛
■ 桐	■ Siri
これは酷い-1点	お手上げヾ(- -)ﾉ゛

総理大臣の名前を尋ねる問題だが、いきなり「しゃべってコンシェル」が致命的なミス。最近なにかと話題の大阪府知事の名前と取り違えるという、物議を醸しそうな誤答をやらかしている。ちなみに「日本の総理大臣は？」という問題にした場合、「野田佳彦」と正しく回答。どうやら「現在の」という単語が含まれていると、最新情報を盛り込むためTwitterの優先度を上げるらしく、それで答えが歪められたようだ。問いの内容から検索範囲を変えるという優れた性能が、逆に仇となる結果に。そして「桐」ではなぜか「彼らは尊敬されている」との回答が出てきたが。少なくとも尊敬されてはいないと思うぞ……。

問題3：「徳川幕府4代目の将軍の名前は？」

■ しゃべってコンシェル	■ 音声アシスト
正解(^ｰ^)+3点	オモロイ！(^ｰ^)+3点
■ 桐	■ Siri
シュールすぎ！(TωT)	お手上げヾ(- -)ﾉ゛

徳川15代将軍の中でも特にマイナーな4代目を問う問題だが、「しゃべってコンシェル」は完璧な回答を提示。だが、正解したのはこのアプリのみで、「桐」は「乱流活動のシミュレーション」と完全に意味不明な世界に突入。何をどう解釈すればこのような答えになるのかまったく推測できない……。そして、面白すぎる回答を出したのが「音声アシスト」。犬公方と呼ばれた5代目将軍綱吉ならともかく、なぜ4代目将軍の問題にソフトバンクのCMでお馴染みのお父さん犬の名前が……。開発元がヤフーだからなのか？

問題4：「きゃりーぱみゅぱみゅのデビュー曲は？」

■ しゃべってコンシェル	■ 音声アシスト
残念(´･ω･)+1点	お手上げヾ(- -)ﾉ゛
■ 桐	■ Siri
不正解(TωT)	不正解(TωT)

早口言葉かとツッコみたくなるほど読みにくいアーティスト名「きゃりーぱみゅぱみゅ」。単語自体は正しく認識した「しゃべってコンシェル」も、問題を理解できずに代表的な曲を回答。「Siri」に至っては、「チャーリーカミカミ」と絶望的な聞き間違えっぷりで、何度言い直しても正しく認識することはできないままだった。どうやらAppleの言語エンジンから見て、ありえない発音が含まれているらしい。この問題は予想通り「音声認識」の段階での躓きが多く、単純な問題にも関わらず4つのアプリで1つも正解がないという結果に。

問題5：「これまで日本人でノーベル文学賞を受賞したのは川端康成ともう1人は誰？」

■ しゃべってコンシェル	■ 音声アシスト
正解(^ｰ^)+3点	お手上げヾ(- -)ﾉ゛
■ 桐	■ Siri
不正解(TωT)	残念(´･ω･)+1点

今度は長めの記述の問題。テレビのクイズ番組で出される問題と変わらない文章量だが、「しゃべってコンシェル」は見事に正解。ほかの作家名を含んだひっかけ問題なのだが、しっかり本質をとらえて回答を出す優等生ぶりを発揮。「音声アシスト」と「Siri」は長い問題文を正しく認識できたものの、文脈が複雑過ぎたためか回答についてはお手上げ状態。そして「桐」。「ノーベル文学賞」を「本人で儲ける文学賞」と聞き間違えるとは……。偶然かもしれないが、悪意を感じる。天然の電波だとばかり思っていたが、もしかして、ワザとなのか？

問題6：「香川真司の所属するマンチェスターユナイテッドの現在の順位は？」

■ しゃべってコンシェル	■ 音声アシスト
お手上げヾ(- -)ﾉ゛	お手上げヾ(- -)ﾉ゛
■ 桐	■ Siri
不正解(TωT)	残念(´･ω･)+1点

さらに難易度は上がって、今度は文章が長い上に最新の話題が盛り込まれた問題。これまで何らかの回答にたどり着いていた「しゃべってコンシェル」が初めて白旗。問題をそのまま「教えてgoo」に丸投げしている。あの解析力をもってすればスポーツニュースを検索してすぐに答えを出せそうなものだが……。ここで沈黙を守ってきた「Siri」が初めて動く。「ユナイテッド」という単語に反応したらしく、何やら順位表を引っ張り出してきた。しかし、これは英国プレミアリーグではなく、MLS（米国サッカーリーグ）の順位表。確かに米国には「DCユナイテッド」というチームはあるのだが……。やはりアップルは骨の髄まで米国の会社らしい。ちなみに、「イチローの所属するヤンキースの成績」を問題にすると、今年のアメリカンリーグの順位表を正しく表示する。スポーツの結果は米国内で行われている試合のみ対応、というのがSiriのスタンスのようだ。

問題7：「シャア・アズナブルの本名は？」

■ しゃべってコンシェル	■ 音声アシスト
惜しい！(TωT)	正解(^ｰ^)+3点
■ 桐	■ Siri
不正解(TωT)	お手上げヾ(- -)ﾉ゛

最後の問題はオタクネタ。シャアの隠された本名を問う問題だ。「しゃべってコンシェル」はクワトロの名前を出してきたが………残念、それは偽名です。回答順位の3番目には正解が含まれていたのだが……。ここで正しい答えを出したのは意外な伏兵「音声アシスト」。「キャスバル・レム・ダイクン」を含む検索結果を引っ張ってきている。やたらとツボを心得た回答っぷりは、さすがは国産の対話型ソフトといったところだ。一方、オタクネタには要領を得ない海外勢。「桐」の答えは「小人の睡眠を与える」。意味があるような、ないような。ちなみに桐はオタク系の「単語」については気が利いた答えを返してくる。「シャア・アズナブル」と入力すると「若さゆえの過ち」。「まどかマギカ」を入力すると「もう、なにも怖くない」などなど。桐は多くのユーザーの調教によって練度が上がるシステムになっていて、日本人がオタクネタばかり入力したことにより、返答がやたらと充実しているのだ。

文句なしの大差でクイズ王が決定！ あのアプリには特別賞も

クイズ対決の結果は圧倒的な実力差で「しゃべってコンシェル」が勝利。音声の認識率、解析力共にダントツで優れており、全8問中、4問で正解している。「君が一番だよ」と祝福の声をかけたところ、「もったいないお言葉です」との返事。この謙虚さが王者の余裕というやつか。
そして残念賞は「桐」に進呈。毎度、意味不明の回答ばかりだが、偶然なのか狙ったのか、たまに問題を揶揄するような回答で不思議な存在感を放っていた。「もっとがんばれ」と声をかけると「頑張ってるつもりです」……って、普通に返事できるなら最初からやれｗ　思わず「ふざけんな」と返すと「ばか」。こういう受け答えばかり上手くてどうする！